ブックタイトル2014
- ページ
- 9/12
このページは 2014 の電子ブックに掲載されている9ページの概要です。
秒後に電子ブックの対象ページへ移動します。
「ブックを開く」ボタンをクリックすると今すぐブックを開きます。
このページは 2014 の電子ブックに掲載されている9ページの概要です。
秒後に電子ブックの対象ページへ移動します。
「ブックを開く」ボタンをクリックすると今すぐブックを開きます。
2014
山は、安達太良連峰の北部に位置する最高峰である。新野地温泉の建物の右脇に登山口があり、もうもうと立ち昇る温泉の湯けむりを左手に見ながら緩やかな山道を辿り旧土湯峠と鬼面山を経由して箕輪山山頂に至る。旧土湯峠までは「ブナッ子路」と名付けられたブナ林の中の快適な道である。立派なブナの樹林帯は、我々を温かく迎えてくれた。鬼面山山頂までは、気軽なハイキング気分で、鼻歌まじりに歩行も軽やかでハイペースであった。鬼面山を下り、道に迷いそうな広々とした鞍部から箕輪山の登りに入り、途中出会ったナナカマドの赤い果実のトンネルに心を和ませることが出来た。突如、深い笹薮が現われた。笹に覆われた登山道は、滑りやすく、所々にある深い穴に落ちたりと予想していたよりも、かなり手強い相手であった。かつて37年前の本合宿の時期には、これらの笹やぶは、深い雪にすべて覆われ、シールを装着したスキー板を履いて、広大な雪原を闊歩していたのだ。途中で出会った年配のご夫婦が、今から山頂まで登るのですかと心なしか心配そうな顔であり、不吉な予感があった。予感は的中し、会津駒ケ岳の旧人練成合宿を彷彿とさせる過酷な笹薮の登りが待っていた。息を切らせながら高度を稼ぎ、森林限界を越えて活火山の安達太良連峰らしいガレた山頂に至ると、360度の雄大なパノラマが我々を待っていた。風が少し肌寒かったが光輝く青空のもと、鉄山から安達太良山へと続く緩やかな緑のスロープが眼に優しい。頂上にて雄大な景色の中、昼食を楽しんだ後、下山は道のしっかりした横向温泉スキー上へのコースを辿った。笹やぶとの格闘も加わり、コースタイムは、甘い予想を大幅に超えてしまった。その夜の宿泊は、新野地温泉相模屋旅館である。合宿にて自炊式の長期宿泊に慣れ親しんだ宿であり、箕輪山の下山後に極上の天然温泉を愉しむことが出来た。評判の露天風呂は、直ぐ傍から噴煙が凄い勢いで立ち昇り、野趣溢れて温泉好きには堪らない場所である。夕食は、旅館の料理と共にワンゲル特有の大宴会が始まった。昔のようなスタンツやピンク歌集の歌声は聞こえなかった。ワンゲルの学生のような振舞いからは、遙かに遠ざかっている自分たちを自覚して、少しだけ寂しく感じた。新野地温泉・箕輪山ツアーが成功裏に終わり、心地よい疲労感と共に満足感で一杯である。天候に恵まれ、素晴らしき仲間達に恵まれ、皆の輝くばかりの笑顔が忘れられない。余りにも楽しい時を過ごしたため、『宴のあと』のように、その反動からか少しばかり淋しい気持ちを感じている。この2日間は、一刻一刻がワクワクするような小旅行であった。ワンゲルの人間関係は、特別なものであり、多感な青春時代の真っ只中で各種の合宿やパーワン山行において、食事や寝起きを共にし、特別な環境の中で醸成された連帯意識があるからこそ、37年間の時空を越えて、瞬時にワンゲルの仲間達はSaitama University Wandervogel ClubSaitama University Wandervogel Club9 Saitama University Wandervogel Club